シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「何だって!!!?」
俺の心の声を、遠坂が代弁した。
「な、何で!!? だってあれは2ヶ月前に…終わったじゃないか!!!」
遠坂は、半べそ状態で俺の胸倉を両手で掴んでわさわさと上下に揺らす。
「じゃあ何だよ、如月は…"血色の薔薇の痣(ブラッディーローズ)"を狩ってるのかよ、制裁者(アリス)オリジナルの…陽斗のように」
煌…。
「久遠、その情報は何処からだよ!!?」
「オレにネットのFXや株を教えてくれた奴」
「状況的には…師匠ではないね。東京の電気は…絶望的だ。師匠の機械に匹敵する、"約束の地(カナン)"の…白皇の残した、あの特異な人工知能を生んだ…巨大コンピュータの補佐がなければ、ボクだって今此処で情報収集なんて出来ないだろうし。よかったよ、ここの電力系統がまだ孤立していて」
かつて俺達を苦しめた電気系統は、遊園地にしてからもどうしても完全に崩すことが出来ず…だからこそ今、外部の影響を受けずに、電脳世界の恩恵を被られるらしい。
何よりここは五皇が1人、今は亡き…白皇の領域。
容易に打ち崩せる領域ではない。
玲程の力がないにしても、遠坂には…普通人よりは余程電脳世界を理解し、その力を借りることが出来るから。
それ故、遠坂は此の地にいる。
「しかし。久遠様にあんな大量にデータを送りつけて。…調べて欲しいというから、文献か何かかと思ったのに。久遠様はお前達の部下ではないのに」
蓮が苛ついた声を出す。
陽斗。
その存在によって人生を狂わされた…陽斗と酷似している女にとって、穏やかな気分ではいられない事態なのだろう。
「紫堂櫂」
久遠が俺の名を呼んだ。
「レグ…白皇が残していた…遺品に、おかしなものが数点あったんだ。
ずっとオレは、それが此処にある意味が判らずにいたけれど…由香から色々事情を聞いて、繋がるものがあることに気づいた。
これは偶然か、必然か。
お前はどう考える?」
その瞳は――
どこまでも紅紫色で。