シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「これに…記憶があるか?」
久遠は、閉じていた本を開いて、俺に見せた。
それは――
その頁には――
「これは"黄の印"と言われるもの」
かつて緋狭さんが俺達に見せた背中の刻印の、その幾何学模様が印刷されていて。
「な、何でそんなものが!!?」
遠坂の声に、旭が笑った。
「久遠様~。それ、"黄衣の王"~? 昔久遠様に教えて貰ったね~」
今、何と?
「そう。各務には、屍食教典儀を始めとした、こうした怪しい本が書庫に貯蔵されていた。
この呪われた戯曲"黄衣の王"は複製(レプリカ)で、本物に比べたら呪力は大したことはないけれど…その戯曲に出てくるのが"黄の印"」
――王様になりたいの。
昔会った、イチルの言葉が頭に蘇る。
「それから…あの男、煌は…"蛆"に塗れたと言ってたよな?」
俺は、目で肯定する。
「由香。お前、その黄幡会…だとかいう宗教、蛇みたいのを祀っていたとか言ってたよな、確か」
遠坂は頷いた。
久遠が、少しだけ…紅紫色の瞳を細めた。
「ありえるか…?
だとしたらこの"約束の地(カナン)"は…?」
そう…呟き声が聞こえて。