シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「ふざけんな、お前ッッッ!!!」
胡散臭さ爆発じゃねえか!!!
せめて、俺の手に偃月刀があれば、この水の枷叩き斬ってやれるのに。
怪しげな素材で出来た…櫂の枷も朱貴の枷も壊せた俺の武器なら、"たかが"水で出来たこんな枷くらい、壊せるような気がした。
しかし偃月刀は…緋狭姉の傍にある。
「聖お前…今までのはなんだったんだよ!!!?」
許さねえ、許さねえ!!!
俺達の味方のフリをして、
乗り込んでくるだろう緋狭姉に手まで貸しておいて。
それでこんなに簡単に掌返すのか?
仕事だと、だから仕方が無いと…
そんなの筋通るわけねえだろうがッッ!!!
「聖!!! お前…朱貴を救おうとしてたじゃねえかよ!!! あれは嘘か!!!?」
「ワンワンはん達が悪条件を打開しようと死に物狂いになり、そして窮地に陥らへん限り、紅皇はんは表に出て来まへん。ウチの役目は、その状況に導くこと。ちゃんと仕事はしておりま」
俺達は囮に利用されたのか。
後悔ばかりが頭に過ぎる。
胡散臭い奴だと思っていながら、どうしてこいつの魂胆を見抜けなかった!!
「俺達を嵌めたのか!!!?」
小猿が憤って叫んでいる。
「恥を知れ、恥を!!!!」
すると――
聖の空気が変わった。
「恥…?
恥など…とうに捨てましたわ。
――生きる為に。
それとも…そんなものの為に、
生きることをやめろとでも?
そう…言うのか?」
標準語になった途端、小猿に向けられたのは…殺気にも似た憎悪。
何なんだよ、こいつは。
聖の醸す空気に、小猿はびびって口を噤む。
聖の心には闇がある。
相当濃い…闇が。