シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


それに、今度は玲だけではなく、七瀬をも追い詰めたようなものじゃねえか。


周涅でさえ辟易しているのなら、誰も兄貴に逆らえない。


小猿なんて、兄貴にとって空気も同然扱い。


「その上で、更に選ばせてやるというのだ。

さあ、どちらかを選ぶがいい。

我は、どちらかの選択は必ず叶える。


紅皇の呪詛を取り消す方法を望むなら、直ぐにでも紫堂次期当主と巫女との間に子を成して貰う。


譲歩案にも関わらず、あくまで紫堂との縁談を白紙に戻したいのなら、紅皇の命は此処で尽きる。


どちらかを選べ」



ああ――



緋狭姉。

玲。



「どちらを選んでもお主達の命の安全は保証する。

選ばねば…処遇を周涅に任せる。

よいな、周涅」


「……御意」


つまり、命はないと脅しているわけだ。


「選んだ後は望む場所にも送り届けよう。

朱貴…。


八門の陣を敷け」


「………」


「朱貴、返事をせぬか」


朱貴は…何も答えなかった。

ただ七瀬を見つめるばかりで。


「朱貴!!!」


すると朱貴はそれには返事をせず、憮然とした表情で…その場で詠唱を唱え始めた。


そして――

拡がる八門の陣。


「うわ~追い詰めはりますな、雄黄はん。

ワンワンはん達…気の毒でっせ?」


追い詰めた1人のくせにいけしゃあしゃあとよくも。


「これは心外。

周涅の出した条件を緩和し、選択を与え…

どちらかを叶えてやろうとしている我の何処が、"追い詰め"ていると?」


柔和な顔に浮かぶ笑いは、ぞっとする程冷たい。


「さあ、選ぶがいい」


急かしているわけか。

冷笑で威嚇しているわけか。


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