シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
早く入らねば――
八門の陣の入り口は自然消滅してしまう。
陣が消えれば、兄貴の二択を選ばなかったとみなされ、俺達は消されるのだろう。
桜と…周涅と兄貴と聖を残した全員で陣に入って逃げようとすれば・・・多分、その前に動く2人にねじ伏せられる。
力では敵わぬ俺らは、逃げ切れない。
「北斗の巫女が苦しそうだぞ?
早く選べ。それとも見殺しにするか?」
薬を奪い取る力がある癖に、俺達に選択肢を突きつけたのは何故なのか。
考えることすら馬鹿らしい。
兄貴は――
楽しんでいるんだ。
周涅よりも性質が悪い。
周涅なんて可愛いものだと、俺の本能が言っている。
敵に回すな、気分を損ねるなと…警鐘が鳴り響いている。
それを感じているのは多分、桜も同じこと。
選択しない選択を含め、提示以外の…第三の選択肢を求めようなら、俺達は何も得られずして即座に殺され、薬は奪われる。
緋狭姉も玲も…
救うことが出来ねえ。
「どうした?
我はお主達に"慈悲"を与えたのだぞ?」
違う。
押し付けがましい偽善者のサディストだ。
どうすればいい?
何を選んでも…
根本的解決にはありえないというのに。
「薬と引き替えに――
どちらかの願いは必ず叶えよう」
――この馬鹿犬めが。
――助けてくれ。
守りたいと願うのは――
玲か緋狭姉…どちらの笑顔か。
八門の陣が薄らぎ始める。
七瀬が苦痛に声を上げている。
泣きそうな顔の小猿。
七瀬を離そうとしない朱貴。
表情を無くしたままの周涅。
横たわったままの緋狭姉。
苦渋に顔を歪ませる桜。
兄貴は笑う。
笑って追い詰めていく。
周涅より残忍な…
「さあ…
願いは如何に?」
魔王の笑みで――。