シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 


「これは、オレが自ら手を施して加工して乾燥させた、ありがたい薬草だ。

――…食え」


は?


乾燥してこんな悪臭を放つそれを…俺に食え?

冗談だろう?


「心配するな、これは原型は"ニガヨモギ"。食えないことも…ないはずのありがたい奴だ」


その微妙な言い回し。


「生薬名は苦艾(くがい)。英語ではworm wood(ワームウッド)。楽園(エデン)から追放された蛇(ワーム)が這った跡から生えてきたとされる植物だ。

"死の象徴"とされるこれは、死に損ないのお前にはぴったりだ。さあ、食え!!! 『気高き獅子』返上…『落ちぶれた子猫』、雑食のお前ならぴったりの餌だろう」


俺は、人間だ!!!


「ああ、手で口を押さえるな紫堂櫂。お前、こんな時に無駄な力使うなよ」


必死なんだ、俺は!!


俺は…死ぬわけにはいかないんだ!!!


「その手は邪魔だ。どけ…って、…無性に目障りだな、その汚い布。最初から何か目障りで外そうとすれば由香に止められるから放っておいたけど…凄く腹立たしいな」


俺は精一杯抵抗する。


嫌だ。


この布だけは絶対嫌だ。


この布は俺のものだ。



――あたし、神崎芹霞は!!!



「だったら…食え!!!」



――紫堂櫂を愛してる!!!



だから俺は――



「その布を捨てられたくなかったら、草を食え!!!」



口を…開いた。


やむを得ず、渋々と。

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