シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
・異変2 櫂Side
櫂Side
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浴室から続く、久遠の部屋。
仕切りドアは至って普通。
廊下に面したドアだけを、わざわざ赤くしたのは芹霞の為だろう。
いつでも何処でも、例え迷っても…
自分の処に来てくれるように。
遊園地のアトラクションといい、そこまで芹霞の興味を向けたいのなら、自ら動けばいいものを…突き放すような傍観スタイルを貫き通しているのは、彼の育った特殊な環境が関係しているからなのだろう。
俺には芹霞の想いを隠そうともしないでぶつけるくせに、本人目の前には何もしない。
――煩いな、せり。
――馬鹿じゃないのか、せり。
不可抗力だったからと割り切って、過去を切り捨て新たな生き方も出来るのに…あえてそれを引きずって心の枷にしているのは、彼の厳粛なまでの崇高な精神性故に。
身体は自堕落でも、心は何処までも禁欲主義(ストイック)で、その強い自制心は俺でさえ目を瞠るものがある。
想いに…言霊という可動的な力を込めない久遠。
しかし…何度も何度もしつこい程に、芹霞の名前を呼ぶ。
久遠だけに許された"せり"の名を、蔑む言葉同様に会話に多用しているのは…久遠の隠せない心故。
そこまで奴も芹霞を求めている。
芹霞の名前にこめられた、秘めたる久遠の想い。
かつて"刹那"と呼ばれていた頃からの、彼の想い。
芹霞は判っていない。
芹霞にもしも初恋の情が蘇れば…
芹霞と久遠は両想いだということに。
初恋は成就する。
お互いに。
敗れるのは――
――芹霞ちゃあああん!!
きっと俺の方だ。
だから一層忌々しく。
だからどうしても対抗心が強まってしまう。
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浴室から続く、久遠の部屋。
仕切りドアは至って普通。
廊下に面したドアだけを、わざわざ赤くしたのは芹霞の為だろう。
いつでも何処でも、例え迷っても…
自分の処に来てくれるように。
遊園地のアトラクションといい、そこまで芹霞の興味を向けたいのなら、自ら動けばいいものを…突き放すような傍観スタイルを貫き通しているのは、彼の育った特殊な環境が関係しているからなのだろう。
俺には芹霞の想いを隠そうともしないでぶつけるくせに、本人目の前には何もしない。
――煩いな、せり。
――馬鹿じゃないのか、せり。
不可抗力だったからと割り切って、過去を切り捨て新たな生き方も出来るのに…あえてそれを引きずって心の枷にしているのは、彼の厳粛なまでの崇高な精神性故に。
身体は自堕落でも、心は何処までも禁欲主義(ストイック)で、その強い自制心は俺でさえ目を瞠るものがある。
想いに…言霊という可動的な力を込めない久遠。
しかし…何度も何度もしつこい程に、芹霞の名前を呼ぶ。
久遠だけに許された"せり"の名を、蔑む言葉同様に会話に多用しているのは…久遠の隠せない心故。
そこまで奴も芹霞を求めている。
芹霞の名前にこめられた、秘めたる久遠の想い。
かつて"刹那"と呼ばれていた頃からの、彼の想い。
芹霞は判っていない。
芹霞にもしも初恋の情が蘇れば…
芹霞と久遠は両想いだということに。
初恋は成就する。
お互いに。
敗れるのは――
――芹霞ちゃあああん!!
きっと俺の方だ。
だから一層忌々しく。
だからどうしても対抗心が強まってしまう。