シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
異変を感じたのは、廊下に出た時だった。
廊下にポツンと置かれていた薬瓶。
青い小瓶のラベルには、"使っちゃや~よ"と書かれている。
何だ、これは?
胡散臭いことこの上ない。
覗き窓の下に"見ちゃや~よ"と書かれている類。
これは…口にしろと言いたいのか?
怪しげな薬を体内にいれようとする馬鹿がいるのか?
くだらない。
此処には、避難している人間が居る。
子供から年寄りまで様々だ。
誰かの悪戯なんだろう。
きっと、これを手にした俺がどうするのか見張っているだろう。
さっきから…視線を感じるから。
乗ってやりたい気もしたけれど、とにかく今、俺は芹霞に会いたくて。
ポケットにしまうのもどうかと思い、かといって廊下に出したまま、子供がこの悪戯にひっかかって誤飲するのも頂けなく…仕方が無いから応接間にでも置いておこう。
そう歩き始めた時だった。
その視線を――
奇妙に感じたのは。
その視線に、俺は覚えがある気がしたんだ。
過去、俺はこの視線を受けたことがある。
それは…親愛と敵意が混ざったようなもので。
感情の全てを俺にぶつけてきているような。
俺の全てを吸い取ろうとしているような。
そして同時に感じるのは違和感。
俺は…何処の部分でその視線を感じている?
そう、感じているのは…
俺の"内部"。
俺は――
外側からと同時に、
内側からも視線を感じていたんだ。
まるで俺の脳を…心を直接見られているような不快感。
何だ…これは。