シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


ああ、この視線だ。


俺を見ていたのはこの黒い瞳。

俺を12年前から縛り続けていた瞳。



「櫂!!!!」


突然芹霞が俺に抱きついてきた。



「櫂、愛してる!!!」



どくん。


その言葉に、俺の心の防御壁は瓦解した。



「あたし…思い出したの!!!」



変わって心に満ちるのは愛情。


溢れ出でる芹霞への想い。



どくん。




ああ――



「あたしは――


紫堂櫂を愛してる!!!!」




時が…戻った!!!!





「せり……


――!!!!?」



それは突然のことだった。



真横から伸びた手刀が、


目の前の…


芹霞の目を抉ったのは。



俺は声にならない声を出してその手を弾く。



「芹霞、せり…か!!!?」



俺の腕の中に居るのは、血に染まった芹霞。



――死んじゃ嫌だあああああ!!!


重なる8年前。

重なる2ヶ月前。


俺の芹霞が、真紅色に還っていく。



嘘だろ、なあ嘘だろ!!?


真紅の眼窩。

消えた視線。


俺に向かう心は無いと言うのか!!?



俺の芹霞が、芹霞が!!!!



芹霞の眼球を抉ったのは…



「どうして…だ、榊!!!!?」




黄色い外套男。




『ちが…ぅ』



「何が…違う…んだッッ!!!」



『目…』


そして…差し出した手の上には。



芹霞の…




碧眼。



碧…眼…?


違う。


青い…ビー玉。



慌てて俺の手の中にある芹霞を見ると、



「な!!!!?」




それは――

人形になっていた。


黄色い服を着た…

手作りの人形。


黒いビー玉の目。

しかし、片目だけは…穴が空いていて、綿がはみ出ている。


それに…俺の記憶が刺激される。



何だ?

誰に?


俺は…この人形を何処かで見たことがある?


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