シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
 
「無事で良かった!!!喋らなくなったから、心配してたんだ…って、ああ、それよりお礼言うのが先だ。

久涅が助けてくれなければ、あたし司狼と旭くんの偽者"人形"に殺されていた。

ありがとう、そしてごめんね、こんな怪我負わせて。背中…痛い?」


俺は…何だ?


「大丈夫だこれくらい。
それより。今更かも知れないが。

俺は…S.S.Aでも言ったはずだ、1人で行動するなと。

何でのこのこ1人で出歩いた、小娘ッッ!!!」



なあ…俺は?



「いや…その囮になろうと…」

「もうその考えはやめろッッ!!!」



俺…

言ったじゃないか。


紫堂櫂だって。



――芹霞ちゃあああん!!!



何で…俺を通り抜ける、芹霞!!!

何で…なかったことにする!!?



俺は振り返り、地面に屈んでいた芹霞の腕を掴んで、強引に引き上げる。


「やだ、何!!? ちょっと離してよ、久涅の偽者!!! あたし、偽者だって判ってるんだから!!! だから消えてッッ!!」


パアアン。


平手打ちを食らう。

くつくつ、くつくつ。


その愉快そうな笑みは…

地面に寝転んで、上半身だけを起している久涅から。



「どうだ、自分を認められない…偽者の気分は?

なあ…? 俺を"模倣"する幻よ」



くつくつ、くつくつ。



「俺は――

久涅を模倣した幻影じゃないッッ!!」



悲鳴のような…鋭い声が出た。


それは心の叫び。


俺は誰の模倣でもなく、

俺は幻ではなく。


俺は今此処に存在している。



「本物だ…」


俺は言った。

声が震えてしまう。



俺が女装してまで、正体を隠そうとした……久涅がいる。


今更どんな言い逃れも出来ない。


だけど…だから何だという?



「随分と…俺の死んだ義弟に似ているなあ?

名前まで…模倣するか、偽者」


もう一度言わせたいのか。



「俺は…本物の…紫堂櫂。

死んでなど…いない」


俺は、ゆっくり…真剣に言ったんだ。

俺の存在意義を賭けた、俺なりの…"言霊"だった。

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