シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「煌に生存、伝えてやってよ。
あいつ…元気なかったから」
違う。
そんな答えが欲しい訳じゃない。
「しかし見るからに久涅そっくりだね~。流石は兄弟だ。凜ちゃんも似てるし…自分とそっくりな人間は世界で3人居るっていうけれど、もう3人揃っちゃったね。揃ったらどうなるんだったっけ?」
もう耐えられない。
俺と芹霞との思い出が、何もない現実に。
ここまで忘れ去られている自分という存在が、哀れに思えて仕方が無くて。
俺は芹霞を手に入れる為に、肩書きを手にしてきたはずだった。
『気高き獅子』も。
紫堂の次期当主の座も。
だけど今。
その肩書きだけが、架空のような紫堂櫂を象るばかりで、肝心の俺がいないんだ。
12年間の幼馴染。
その年数は、俺がお前を愛し続けてきた年数。
それすら否定され、それすら記憶から除外されて。
ずっとお前に恋して愛し続けていた俺は、お前の中の何処にもいない。
俺の心が、お前の中に存在しない。
だったら――
今此処に在る俺の意義は何だ?
今までの俺の努力は一体何だと言うんだ?
それならせめて――
俺の温もりで。
俺の全てで包めば、思い出すのではないか。
言葉で通じない。
だから俺は――
芹霞を胸に掻き入れようとした。
不安と哀しみで早まる鼓動を聞かせば、
俺の心の叫びを聞かせれば、
――芹霞ちゃあああん!!!
芹霞は俺を助けにきてくれる。
芹霞は俺を見捨てない!!!
縋るのは…
8年前に唾棄したはずの、12年前の状況。
泣くことで芹霞を縛り付けた事実。