シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
幼い子供の声が頭から消えると同時に、頭痛も鎮まる。
何?
一体何?
「願えば叶うなどという…優しい現実はない」
久涅が、刃のように鋭い口調で、彼を斬る。
「お前は恵まれすぎた」
そして言った。
「お前の存在は、小娘にとって苦痛なだけ。
小娘を苦しませても…
それでもお前は、自分の想いを優先するのか?」
それは詰るような口調で。
紫堂櫂は何も言わず、押し黙ったまま。
「だとすれば…
お前は、親父そっくりだ。
自分のことしか考えず、他はどうでもいい…そんな傲慢な奴そっくりだ」
「違っ!!!」
彼は顔を上げ、慮外だとでもいいたげに目を見開く。
「何が違う? お前に、少しでも人間としての心があるというのなら。思い出したくないと拒絶反応まで寄越す小娘の為に、お前は引くべきじゃないのか?」
久涅の…あたしを抱き留める力が強くなった。
「お前は…
居なくなった人間。
お前が小娘から手を引くというのなら。
俺は…最大限の慈悲でもって、お前が生きているということは忘れてやる。
親父にも報告しない。
俺だけの心に留めておく」
久涅…は、何か事情を知っているの?
ねえ…。
何だか、あたしが紫堂櫂の知り合いだったように聞こえるよ?
そして――
「引かないというのなら…
今此処で、闇に葬ってやろうか」
兄から弟に送られたのは。
殺気、だった。