シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


きっと久遠であるならば。

彼の意思1つで、芹霞の心を手に入れられるだろう。


それは一度でも、芹霞から恋心を向けられた者の強み。

時は容易く、望んだ過去に戻るだろう。


真実は時間に勝る。


どんなに時間をかけても、僕が欲しい心を、未だに向けられない僕は――

無様にも芹霞に取り縋るしか取る術はなくて。


進むことも戻ることも出来ない…時間の檻に囚われるだけ。


想いなら負けていないのに、

どうして僕は拒まれてしまうのか。


どうして僕は愛されないのか。


どんなに求めても、芹霞は僕から逃れようとする。

それがどんなに僕を苦しめるものか、判ってくれない。


隣に居て欲しい。

僕を愛して欲しい。


今は"お試し"時で、誰よりも僕を意識してくれている時間なのに。

僕には優位な状況のはずなのに。


君が意識しているのは…誰?


僕を見て。

僕の隣に居て。

僕を愛して。


ねえ…

こんなに君が好きなのに、どうして判ってくれないの?

どうして、僕から逃れようとするの?


どうしても、1つの結論に行き着く。


考えたくもなかった最悪の結論は…


僕は真実の愛には敵わない。


幾ら頑張ってみても。

幾ら足掻いてみても。


――紫堂櫂は存在していなかった。

――君が愛したのは紫堂玲だ。


僕は偽りで塗り固められた存在で。


僕はいつまでも脇役。

何処までも主役の引き立て役にしか過ぎないんじゃないかって。


ギャクテンナンテデキヤシナイ。


お姫様は君。

王子様は…誰?


君の運命の相手は…

君が選ぶ相手は…



僕にしてよ!!


そう思ったら、きたんだ。


心臓に…ずきん、と。


拳で、心臓を殴られたような衝撃に、僕の身体が傾いた。


その気の緩みに…芹霞からの手が離れて。

行かないでと僕は芹霞を見つめた。


それでも芹霞の手は差し伸べられなかった。

繋いだ手は解かれた。


落ち着け、僕の心臓。


このままだと、本当に…大きな発作が起きる。


鎮まれ、僕の心臓。
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