シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
そんな哀れな僕に同情したのか、芹霞は僕の隣に座ってくれようとしたけれど…すぐ逃げるように居なくなってしまった。
手に入れる前に、すぐ飛び立ってしまったような…錯覚。
焦った。
僕が置いていかれたのだと。
行かないで!!!
見捨てないで!!!
慌てて追いかけようとした僕に、久遠が怒鳴った。
「いい加減にしろ、紫堂玲。
せりは…お前の為に薬を取りに行ったんだぞ?」
そう、僕の為。
嬉しいよ?
芹霞は優しい。
その優しさが…今は心臓に響く。
優しさは…僕から逃れる為の言い訳じゃないかって。
その優しさが僕を疑心暗鬼にさせる。
優しさより同情より…
真実の愛が欲しい。
打ち勝ちたい。
僕は椅子に座って、心臓に当てた手にぐっと力を入れ、呼吸を整えた。
乱れ飛ぶ僕の鼓動。
余計なことを考えるな。
今は…安定した鼓動になるように、心を落ち着かせろ。
「師匠…大丈夫かい? 寝ていた方が…」
「大丈夫。僕はまだ…頑張れる」
「ねえ、命削ってまで無理しないでよ? そんなこと…神崎も凜も…勿論ボク達も…誰も望んじゃいないから」
僕は由香ちゃんに微笑んだ。
僕は――
本当にいい仲間に恵まれている。
嫌な奴など…僕くらいなものだ。
自己嫌悪の念だけが大きくなり、あまりの情けなさに目の奥が熱くなってくる。
それを判られないようにして、僕は笑った。
「由香ちゃん…データ。メールデータ、調べて見て」
そう、気分を変えよう。
芹霞ではないことを考えて、心臓を…体調を整えよう。