シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
  「クマ。画面使っていいかい?」

「おう、俺が少し改良したこっちの虚数対策のプログラムはほぼ完成し、もう実行してる。もう少しで効果が出始める状況だ。画面はお前さんに譲る」


三沢さんが改良した虚数向けのプログラムは、発動されているのか。

だとすれば…もう少しで虚数は緩和され、僕が使える0と1が回復してくる。

電脳世界から…少なくなりつつある0と1を補充しなくてもよくなる。


僕は、プログラムの成果を願った。


由香ちゃんはカタカタとキーボードを叩き始め、ネットが切断された今では不要となっている一般メールソフトを立ち上げた。


「やっぱ…簡単にはいかないか。メールデータが壊れている」


想像通りか。


「由香ちゃんTEMP(一時)ファイルは? 機械を再起動しない限り、ダウンロード展開したファイルデータは、そっちにも残っているはずだ」

「そうだね!! 基本的なこと忘れてたよ!! データ、データッッ!!」


カタカタカタ…。


「…あっちゃあ…」


突然由香ちゃんは頭を抱え始めて。


「師匠、TEMPはもぬけの殻。"魔の巣窟"に入っちゃってるよ…。メインコンピュータに送りそこなったスキャナデータの残骸もあるみたいだね」


僕は目を細めた。


「入っているのは、氷皇データとスキャナデータだけ?」


「うん。そうだね。全てかどうかは、此処からでは判らないけれど…かなりの容量だから、部分的でもデータは残っているはずだ」


「…攻撃されたのは、その2つだけ、か」


そこに故意を感じた。


「"魔の巣窟"? 何だ、それは」


蓮の問いに僕は答える。


「暗号化でデータを覆った、コンピュータの仮想領域のこと。元のデータ内容が判らないほど、暗号化によって別ものに変貌するから、僕と由香ちゃんが勝手にそう呼んでいるだけだ」


そして僕は補足説明を続けた。

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