シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
久遠が言った。
「情報収集がお前の役目なんだろう? 少しでも早く情報を見つけたいよな? 機械など、有能な2人の部下に任せればいい。
よかったな、紫堂の次期当主。
デスクワークは、心臓の負担がかからないから、ゆっくりと情報集めが出来るぞ」
ひらひらと手まで振られる。
振りながら目で威嚇される。
さあ、早くとりかかれと。
有無を言わせぬ瑠璃色の瞳。
誰よりも早く情報を欲しがっているのは、久遠…らしい。
そして、その久遠は…自分で動く気はないらしい。
僕、押し付けられてるの?
もしかして。
応接間で、皆が哀れんだ目をした僕を見たのは、こうなることを見越していたの?
でもまあ…読むくらい…。
ぺらりと紙を捲ってみた。
目がちかちかしそうな英文字が並ぶ。
「ラ…ラテン語…?」
僕の中ではラテン関係は禁忌だ。
――あははははは~。
「何だ、ラテン語くらい読めないのか?」
「ラテン語くらい、僕だって読めるけど…」
出来れば読みたくないだけで。
かなり忌々しいだけで。
「久遠もラテン語くらい読めるのなら…」
「ラテン語くらい読めても、お前が読めるならお前が読め」
単純に、読むのが面倒なだけらしい。
「由香。ラテン語って…"くらい"のレベルなのか?」
「ボ、ボクに聞くなよ。ボク、国語だって怪しいんだから」
女2人が何やら囁きあっていた。