シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「誰誰!!!?」
「ねえ、最近テレビで出ている"氷の次期当主"じゃない!!?」
「ええ!!? 笑うの、あんなに可愛く笑うの!!!?」
「あ~駄目、悶絶する!!!」
「――っていうか、女連れじゃないよね?」
「まさか、あそこにいる…」
「まさか、ね」
最初から…この店に入った時から、玲くんに向けられる視線は凄いものだった。店員・客入り混ざった熱い視線と、ティアラ姫のトレーナーを着ていたあたしへの、敵意のような嫉妬の眼差し。
服もそうだし玲くんに並んで歩くというのが、どんなに身分不相応なことか判っていたあたしだけれど、ここまで差がついてしまったら、あたしが今着ている素晴らしすぎる服を即返上して、ずっと世界の隅っこに引き籠もっていたい。
贔屓目で並の中くらいの"あたし"と、極上の上の玲くん。
月とすっぽんだ。
「ええ、女性用ブランドは"デラ=シハカ"という、デザイナー兼副社長が担当を始めまして。元々はデザイナー兼社長が創立した"アレス=イオア"が母体です」
「だから僕、嫌だと思うデザインがなかったんですね。僕、彼のデザインする服が好きだったんです。それも素材もいいものだし」
にっこり。
ああ、久々の玲くんスマイルだ。
気分がいいのは嬉しいことだけれど。
玲くん・・・。
手加減して下さい。
お願いします、あたしと他人のフリして下さい。
何処のブランドのものかは知らないけれど、お願いだから・・・一人そんなに輝かないで下さい。
ああ、女の子達の顔が凄いです。
引き籠もりたい。
お願い、引き籠もらせて下さい。