シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
それにしても――
「ドルイドって…カエサルの『ガリア戦記』に出てくるアレだよね?」
そんなものが"約束の地(カナン)"の…しかもレグに関係あるとは。
「そう。ケルト語「ドゥル」訳して「樫(オーク)」、「ウィド」が「知識」。よって…「樫(オーク)の木の賢者」と呼ばれたアレだ。
まあ、レグは秘密結社育ちだから、ドルイド色に染まっている部分があるとすれば、権力を持つ立法者としてよりも…怪しげな術の方だろう。
神託・預言、秘薬、天候制御、変身、転生…ドルイド僧が行うドルイド魔術の多くは、詩や呪歌の形で口誦伝承…口伝され、唱える事で初めて効果を現すものが多いという。ある意味、それは古神道の言霊と似ている。だからかもな、レグが言霊に精通していたのは」
「霊魂の不滅とか、死後他の肉体に移るという輪廻転生観から言えば、仏教にも通ずることが出来るかも知れないね。そう考えれば、日本の宗教は全般的に馴染みやすいか。
樫やヤドリギら植物を、神木として神聖視する概念だって、神道にも…」
ヤドリギ…。
――オレはどうしても紫堂玲が関係しているという『TIARA』…人工生命にも似た複製だの増殖だの…それらの単語が頭から離れていかない。
「寄生・・・だな」
多分、僕の心を久遠は見抜いていたのだろう、彼はそう言った。
寄生。
複製。
増殖。
模倣。
…etc…。
"約束の地(カナン)"は…疑似生態系を持つ人工生命、とりわけ全貌不明な『TIARA』などに関係しているんだろうか。
それとも…偶然の一致?
「なあ…芹霞が遅いな」
蓮が言った。
「そういえば…凛も遅いね」
「ああ、凛は…傷を洗うためにシャワーを浴びるって…」
そう言いかけた僕の心臓が、不穏の音をたてた。
どくん。
もう…シャワーは終わったんじゃないか?
どうして此処の部屋にこない?
櫂は今――
何をしている?