シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


それにしても――


「ドルイドって…カエサルの『ガリア戦記』に出てくるアレだよね?」


そんなものが"約束の地(カナン)"の…しかもレグに関係あるとは。


「そう。ケルト語「ドゥル」訳して「樫(オーク)」、「ウィド」が「知識」。よって…「樫(オーク)の木の賢者」と呼ばれたアレだ。

まあ、レグは秘密結社育ちだから、ドルイド色に染まっている部分があるとすれば、権力を持つ立法者としてよりも…怪しげな術の方だろう。

神託・預言、秘薬、天候制御、変身、転生…ドルイド僧が行うドルイド魔術の多くは、詩や呪歌の形で口誦伝承…口伝され、唱える事で初めて効果を現すものが多いという。ある意味、それは古神道の言霊と似ている。だからかもな、レグが言霊に精通していたのは」


「霊魂の不滅とか、死後他の肉体に移るという輪廻転生観から言えば、仏教にも通ずることが出来るかも知れないね。そう考えれば、日本の宗教は全般的に馴染みやすいか。

樫やヤドリギら植物を、神木として神聖視する概念だって、神道にも…」


ヤドリギ…。


――オレはどうしても紫堂玲が関係しているという『TIARA』…人工生命にも似た複製だの増殖だの…それらの単語が頭から離れていかない。


「寄生・・・だな」


多分、僕の心を久遠は見抜いていたのだろう、彼はそう言った。


寄生。

複製。

増殖。

模倣。

…etc…。


"約束の地(カナン)"は…疑似生態系を持つ人工生命、とりわけ全貌不明な『TIARA』などに関係しているんだろうか。

それとも…偶然の一致?


「なあ…芹霞が遅いな」


蓮が言った。



「そういえば…凛も遅いね」


「ああ、凛は…傷を洗うためにシャワーを浴びるって…」


そう言いかけた僕の心臓が、不穏の音をたてた。


どくん。


もう…シャワーは終わったんじゃないか?

どうして此処の部屋にこない?



櫂は今――

何をしている?


< 1,281 / 1,495 >

この作品をシェア

pagetop