シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「…久涅は何で闇石を持っていたんだろう?」
僕は首を傾げた。
守護石は1人1つしか持てず、他人とだぶることはない。
僕が生きている限り、月長石は僕以外が持つことはないだろう。
櫂の闇石…血染め石(ブラッドストーン)もまた然り。
ただ櫂の場合は特殊で、櫂が生まれた時から2つに割れているという。
そのうちの1つは元老院…藤姫に渡ったが悪用されて喪失、残り1つは8年前に芹霞の仮初の命となり、2ヶ月前藤姫にそれを狙われた。
そして今、更に2つに割られてはいるものの…その時も、8年前も、久涅という存在の影はなかった。
どう考えても、時間軸的に…櫂の闇石を、久涅が持ち得ることはありえない。
13年以上前に久涅が自らの守護石として、闇石を持っていたというのなら、逆に…後で生まれた櫂が闇石を持っている方が不可解なこと。
「あいつが、石の力を使い始めたのは?」
久遠が問う"あいつ"とは、櫂のことだろう。
「多分、8年前。僕が次期当主を排斥されてからのはずだ」
僕と対峙した時は、剣すら持つのが初めての様子で。
全ては――芹霞の為に。
櫂は…強くなったんだ。
「13年前、久涅の元にあった闇石。その時にはあいつは既に生まれているか…」
久遠は目を細めて少し考え込んで、
「模倣したのは…どちらだ?
あいつか、久涅か…」
そんな呟きが聞こえた。
模倣…?
僕の頭に、また『TIARA』が思い浮かんだ。