シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「顔は勿論、闇石や闇使いでなければ開かない黒い扉を、あいつも久涅も開けた事実を含め、久涅はやけにあいつと被る。
それを故意的とみなすなら、そこに久涅があいつを敵視する理由があるんだろう」
「だけど…今の今まで櫂と久涅には面識がなかったんだよ?」
「…久涅が消息不明になった時、どんな時間が流れていたのか…知りたいな」
瑠璃色の瞳は、更に細くなる。
桜華で、僕は久涅のことについて色々情報を集めてみたけれど、結果は皆無だった。
どんな極秘のデーターベース、無論犯罪者のブラックリストに至るまで、一切名前も顔も上ってこなかった。
「表世界に居た痕跡がないんだ。
人為的に"隠した"情報なら、僕は掴める。
だけどその痕跡すら、表世界にはない。
断言してもいい。
久涅は、表世界には居なかった」
そして続けて言う。
「裏世界もまたその詳細は一切不明で、入り込むだけでも命の覚悟が必要だと言われている。紫堂から身包み剥がされ追放された…孤立無援状態の久涅が、そんな危険極まりない場所に、たった1人で何年も生き抜いたとは考え難い」
「裏世界に引き込んで育てた、誰か…影に居るのか。スポンサー的な存在が」
「否定は出来ないね。裏世界が絡んでいるのなら、表世界から情報を掴むのは至難の業だ。
裏世界に入らねば。
かといって…単独裏世界に忍び入るのは更に至難と言われている。
簡単に行ける場所ではないんだ。
場所は何処か、どんな場所なのか、一切の情報がない。僕達の中では桜が一番裏世界に繋がりはあるけれど、あくまで精通した者と、表世界でやりとりをしているだけだ。
やりとりを出来るだけ…恵まれているようなものさ」
「だったら師匠、情報を買えば…」
「買える金額で、更には売ろうとしてくれればいいけれど…ね」
常識的な正攻法では無理な気がする。
そんな簡単に得られる情報なら、とうに僕が見つけてる。