シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「裏世界…か。外界には…そんな世界まであるのか」


久遠が薄く笑った。



「もしオレが此の地から出られるのなら。生ある"表世界"を失ったオレが、裏世界に行くのが一番適役なんだろうけどな」


それは夢だな、と久遠は目を伏せる。


出たいんだろう、本当は。

表であれ裏であれ、芹霞と共に居られる外界に。


それを思うと…切なくなる。


そう感じたのは僕だけではなかったみたいで、由香ちゃんが妙に元気な声で話題を変えた。



「ねえ、久遠。レグのにあった奴。各務の家で、久涅とか"彼ら"…と、何してたのさ。懇親会じゃないんだろ?」

「多分、"あのこと"を言ってるのであれば…」


久遠は眉間に皺を寄せて、当時を思い出しているようで。

記憶を絞り出すようにする久遠の様は珍しい。


興味ないことは、記憶が薄いのか。

だけど芹霞のことに関しては、逐一覚えているのだろう。


…イラっとくるけど。



「確か各務に、沢山子供が…小汚いのから小綺麗なものまで、年代バラバラの未成年がやってきた。そして一同、地下の大広間に集められ、誰かの眠くなるような話を聞いて…」


「……聞いて?」


由香ちゃんが続きを促す。


「寝た。首が痛くなったから、部屋に帰って本格的に寝た。喉が渇いて起きた後、地下を覗いたら、もう誰も居なかった」


………。



「がははははは!!!」



三沢さんが、画面を見ながら爆笑している。

傍聴者に徹しきれなかったらしい。


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