シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
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それは正しく危機一髪。



「蓮!!!!」



応接間。


薬瓶を手にした蓮の眼球めがけて、

黄色い外套男の手刀が入る…寸前。


僕達はほぼ同時に、黄色い懐へ飛び込んだ。


久遠はその手を弾き、

僕は男の鳩尾に手刀を入れ。


ガキン。


筋肉とは思えぬ程の強い反発力に、僕の手は弾かれた。

指先にじんとした痺れが走る。


まるで…鋼の感触だった。


「何だこれは…!!!?」


男の手に触れた久遠の顔にも、驚愕の色が見えて。



「こいつ…鎧でも着ているのか!!?」



黄色い布の下は、どうなっているのか。

堅固な何かを打ち付けているような感覚だった。



「何で…ダメージを与えられない!!!?」



久遠の体術はしなやかで、かつての"約束の地(カナン)"にて、最後に対戦した白皇を思い出させる。


白皇が後継者にしたいとまで思わせた久遠は、その形こそは違うけれど…確かに愛は注がれていたのだろう。


神楽のように神々しくも美しい型を維持しながら、敵の急所を的確に突く様は猛々しくもある。

女形であり対極の男形でもあり。

まるで別人の形が1つに融合されているように思えるのは、そのどちらかが…かつて"刹那"と呼ばれていた者が持っていたものなのかもしれない。

久遠をもってしても、僕をもってしても、貫通どころか、男の"肉体"に触れた実感を持てなかった。

表皮の感触すらない。


跳ね返る。

反射される。


まるで鉛に拳を打ち付けているようだ。


何か…纏っているのか。



「蓮、怪我は!!!?」


叫んだ久遠の言葉に、


「大丈夫です、ありがとうございます久遠様!!!」


平気だと、力強く蓮は答えた。



足。

胴。


相変わらず、固い衝撃に攻撃が弾かれ、手足は打ち身のようにじんじんする。


尽かさず久遠が、手にした何かの石を鎌に顕現した。

かつて"断罪の執行人"として振るっていたあの大鎌は、久遠の持つ石が顕現したものだと、初めて知る。

白皇が久遠に石からの顕現を教えたんだろうか。

顕現は緋狭さんしか知らない特殊なものではなく、五皇レベルならば普通のことなんだろうか。


そう思いながら、外套男の手を弾けど。


頭に浮かぶのは…

一瞬だけ垣間見えた石。



………。

………。

………。


見覚え、ないか?


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