シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
『ふぅ…・しゅぅ…』
それに時折聞こえるこの音。
まるで喘息のような…。
声帯は…ないのか?
何だ、この男は!!!
人間、だよな!!?
「師匠、クマが…剣を見つけてきたよ!!! 今渡しに行くからね!!!」
「……?」
由香ちゃんの声に、男が体を震わせた気がした。
それはまるで動揺のように。
男からの焦慮感のようなものを感じるのは…気のせいじゃない。
喘鳴のような音が激しくなっているんだ。
何で、突然?
もしかして――
由香ちゃんを恐れてる?
それとも…剣?
由香ちゃんは剣を両手で引き摺るようにしながら、こちらに走ってくる。
彼女は、緊急事態には怪力となるのは過去証明済み。
まず普通の女子高生は、こんな重い剣は両手でも持てないだろう。
『……ぁあぅっ…ぁぁ・・』
間違いない。
仮面は、剣ではなく…由香ちゃんに向けられている。
これは…由香ちゃんに対する怯えだ。
どういうことだ?
男は、最早戦意を失って、ただ固まるのみ。
それは久遠も気づいたようで、訝しげに見つめていたが、やがてはっとしたように瑠璃の瞳が見開かれた。
「紫堂玲、先にせりを探しに行け」
久遠がそう言った。
「こっちが片付いたら、由香とクマとでヘリを探す。お前は…2人を探して守れ」
久遠…?
どうして僕を、突然突き放そうとする?