シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「今、紫堂玲に迎えを行かせる処だ。それより葉山。白皇の結界を踏み超えて、イレギュラーな方法で"約束の地(カナン)"に割り込めれた理由は?」
芹霞さんもいない。
櫂様と一緒に居るのだろうか。
「陰陽道…八門の陣。八門の迷路を抜ければ、望む場所に繋いでくれる術らしい」
私の答えに、久遠は意外というような顔をした。
「そんな技を習得していたのか?」
私は首を振った。
「何処ぞの馬鹿のおかげで…
敵に用意された退路を渋々渡っただけだ」
そう忌々しく言い捨て、見つめた先は…
「ぴゅう~♪」
口笛を吹いて、わざとらしく横向いた聖。
「敵の…術か?」
「敵ではない。五皇並みの力持つ、素性不明な男によるものだ」
「五皇並みの力? でも同等の力があったとしても、レグの結界は破れるはずはないぞ? 相殺となり、術は発動されないはずだ。何故道が拓けた?」
私に説明を求めるから、仕方が無く顎で補足を促した先は…
「黙秘権」
思った通り常套句を口にした後、口笛で"さくらさくら"を吹き始めた。
犬のおまわりさん。
アイアイ。
さくらさくら。
人を食ったような態度が無性に腹立たしい。
馬鹿蜜柑並みに腹立たしい。
「あ…あ…」
震えたような声が聞こえて、振り向けば玲様が、煌を指差して言葉にならない声を発していた。
「師匠、落ち着いて!! 何、ギョギョギョしてるのさ!!」
玲様は深呼吸をしてから、叫んだ。
「…煌が肩に担いでる赤い人――
もしかして…
もしかしなくても――
緋狭さん!!!?」