シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

玲様の注意は、朱貴の術よりも…意識無いままぐったりとしている緋狭様に注がれていたようで。


そうだと返事をすると、玲様は大きく仰け反られた。


「緋狭さんが何で!!? 

何で最強の紅皇が倒れてるの!!!?

最強超えるのは誰だよ!!!?」



そしてまた、玲様は顔を歪められて、心臓に手を置かれた。


「だから師匠、そんなギョギョギョするなって」

「しない方がおかしい事態だってば。だって緋狭さんがだよ!!? 緋狭さんが…うっ」

「だから言ったこっちゃない。師匠、ギョギョギョやめて、はい深呼吸、深呼吸」


そして落ち着かれた後、玲様は私達に言った。


「だけど、ナイスタイミングで現れてくれた。

邪を弾く偃月刀と櫂を探す"犬鼻"は、今の僕には必要で、それに煌は回復結界は造れないものの、"生ける屍"を退ける火の力はある。

桜の機転と小回りのよさは久遠の手当てに必要だ。裂岩糸は大量の敵も捌けるし蓮の鏡と合わせれば、見えない敵も幻術も凌げる。それに桜は、久遠よりも遥かに役立てる回復結界も作れる。ああ何て適材適所」


え? え? え?

久遠は面白くなさそうに舌打ちしている。


「煌、桜。着いたばかりで悪いけど、働いてもらうよ?

久遠も肩の緋狭さんの状態も非常に気がかりだけど、今は櫂と芹霞を見つけたい。桜、僕はこれから煌と出かけるけど、久遠と緋狭さんを回復結界で守ってくれ。それからこの屋敷が狙われたら、頼む。

もし不測の事態が起きたら、久遠に相談してみてくれ。桜に回復して貰っていながら、拒むことはないだろう。身体は動かなくても、頭だけは扱き使え。

そうだ。機械室からラテン語の書類を運んで、訳させろ。

ぐだぐだ言うようなら、回復結界をやめて傷を抉ってもいい。"しちゅ~"に効果を期待しよう」


きびきびと指示を出す玲様。


"しちゅ~"?


意味が判らない単語の効果は、久遠は悟っているらしい。

またもや久遠の舌打ちが聞こえる。


それを無視して、


「はい、玲様」


そう返事をすると、玲様は嬉しそうに微笑んだ。

その微笑を見ると、直前までのことが思い出されて、胸が痛くなるけれど。


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