シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
――――――――――――――――――――――――――――……


回復結界を張る。

久遠と…横に居る緋狭様の為に。


多大な力を秘める2人が、紫堂の力も持たない私の結界の中で、傷を治癒しているのはなんとも不思議な気分だった。


久遠は、少しずつ頬に赤みは差してきたけれど、緋狭様の肌は、段々と色を失い、紫がかっている。


私の結界は、緋狭様に効いているのか不安になる。

肌が紫がかってみえるのが、気のせいなのか真実なのか…判別に自信がない。


1つだけ確実だとすれば――。


回復結界は、"壊死"に至る時間を僅か延ばすだけで、根本的解決策とはなり得ないと言うこと。


気休め…にしかすぎない。


私は――

キッと後ろを睨み付ける。


視線の先には、部屋の片隅。

依然裂岩糸でぐるぐる巻きの蓑虫となっている聖。


――葉山は~ん。

――1人寂しいんや。そっちに、連れてって~な。

――おおい、葉山は~ん。


ずっと口が動いていたけれど、完全無視を敢行していたら…いじけてぶつぶつと独りごちて、引篭もっている。


こんな男などどうでもいい。


緋狭様を裏切り、その肌に背中に、ナイフを突き刺し死に至らしめていることに、人としての罪悪感を覚える処か、まるでなかったことにして振る舞うその姿。


へらへらと笑う顔さえ腹立たしくて仕方が無い。


バラバラに刻んでやりたい。

顔を見るのも忌々しい。


――桜、小猿とアホハットも連れるんだ!!!


煌がそう言わなかったら、私はこんな男など…此処に連れなかった。


――俺を信じろ。


そこには、有無を言わせないような…強さがあった。

いつもの惑い惑ってぐだぐだになるヘタレワンコの姿とは程遠かったから。


仕方が無いから。


触れたくもないから、裂岩糸で巻いて引き摺ってきた。


――うわああああん!!!


皇城翠はあまりに煩くて癇に障ったから。

やはり裂岩糸で巻いて引き摺ってきた。



玲様が帰られたら、聖に拷問をかけようか。

本家本元玲様に任せた方がいいか。


とにかく…生温い方法では私の気が済まない。

< 1,307 / 1,495 >

この作品をシェア

pagetop