シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「基盤を浮き出した呪法など…オレは聞いたことがない。これは何だ? 刃物に何か塗られていたのか?」
久遠の問いに、聖は口元を吊り上げる。
「誰にでもわかる呪詛であるのなら、罰則(ペナルティ)の意味はあらへん。全てなるようになって"必然"に発動される呪詛やさかい、刺す方も刺さられる方も特殊とだけ言っておきまひょ。"必然"において成される突然変異、ま、いわゆる…化学反応みたいなものやな」
特殊な刃物と…特殊な肉体。
刃物はもう見ることはできないけれど、緋狭様の身体は…どうみても嫋(たお)やかな女性の肉体。
「突然変異…。ということは。
紫堂玲が関係してる『TIARA』絡みか?」
玲様が関係している『TIARA』?
「さあ…どうでしゃろ。0とか1とか虚数とか。電脳世界におけることは、難しかしゅうてウチには判りませんわ」
久遠は、冷たい笑みを零して。
「つまり…そういう類ということか」
予想通りというように、何の感慨もない顔で、久遠は言った。
聖は誤魔化すように、横を向いて口笛を吹き始めたが、
「しもうた…。ないやんけ。全然ないやんけ。思い浮かびもせえへんわ」
何やらぶつぶつと独りごちて。
そして…吹かれた旋律は聴いたことが無いもの。
無反応の私達を見て、聖が妙に焦った顔をした。
「なんや…ハンプティ・ダンプティ知らへんのか!!! ハンプティ・ダンプティといえば『鏡の国』のアリスやんけ!!! カガミやんけ!!!」
多分――
"くおん"の言葉が出る童謡がなかったんだろう。
"かがみ"つながりに選定した歌は、私達は知らず…いわゆる選定ミスで。
「しくじったわ…」
…どうでもいい。そんなこと。
本当に。
どうでも良すぎる。そんなこと。