シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「まあ…ウチかて鬼じゃあらへん。表舞台で名を轟かす…"生久遠はん"に会えたその記念に、紅皇はんを助けるヒントあげまひょ」
聖はそう言って。
「紅皇はん、何で無理したのか…それを考えてみるがよろし」
無理…?
「何で紅皇はん。突然"裏切って"あの場に現れたのか」
確かに…そうだ。
櫂様の胸を抉るに至るまで、敵側に回っていた緋狭様が、どうして急に…掌返すように私達を救いに現われたのか。
何故、堂々と姿を現すことが出来たのか。
ただの慈悲故…か?
「わざわざ、紅皇はん…自分で口にされたやないか…」
私の疑問を見越したように、聖は言う。
「何で、あの場に来ることが出来たのか」
――なんでも私は、天一神が北角に居座る方忌み(かたいみ)中らしい。縁起悪いからと胡散臭い上司に無理矢理休暇を取らされ、北とは無縁の放蕩生活。
それを口にした時、
「方忌み中?」
瑠璃色の瞳が細められた。
「天一神が北角に居座る…って…もしや」
久遠は聖を見る。
「緋狭は…初めから、"約束の地(カナン)"に来る気で!!!?」
…聖が居る為、煌は多くは語らなかったが、八門の迷路でぼそりと私に囁いたはず。
――"約束の地(カナン)"に来るのは必然らしい。
と。
「陰陽道における方忌みで、対象となる方位神は5つ。そのうちの1つ天一神は、同じ方角に5日留まる。つまり緋狭が自由に出来る期限は5日。
そして…"約束の地(カナン)"に来る予定であるならば、"約束の地(カナン)"から見て北の方角には移すなと、即ちそれは…
"東京に帰すな。5日、"約束の地(カナン)"に止めておけ"
そんなとこか?」
聖は…肯定するように口元を吊り上げる。
「そしてその方忌みが…胡散臭い上司の命令だということは…それは緋狭の単独行動ではなく、あの青い男も1枚噛んでいると…いうことか」
――あははははは~。