シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「結果論的に言えば、緋狭が傷を負ったから、如月も葉山も…皇城の小倅も聖も、安全かつ最短で"約束の地(カナン)"にこれた。
それを必然というのなら。
緋狭が身体を張ることで、"時間に間に合わせた"ということか」
時間?
「"約束の地(カナン)"にとっても、突如事態が急変した。
レグの結界を破り、緋狭達が現れたのも…今、この時期でなければ成し遂げられなかったと…そういえるのかもしれない。
だとすれば…。
緋狭を此処に"導いた"情報屋。
お前は…敵か、味方か」
鋭い瑠璃の瞳の先の聖は、陽炎のように不安定な笑いを見せた。
「ウチはただの情報屋や。情報と金次第で、どちらにでも転びま」
何処までも心を隠し続けるその様は。
どこか…朱貴にも似ているようで。
だから聞いてみたくなる。
「聖。お前にとって、朱貴とは何だ?」
「………。
もう1つの…運命」
聖はそう答えた。
その意味は判らなかったけれど…
道具には思っていない。
そういう風に私は感じ取れた。
「――で、姉御を助けるためにはどうすればいいのさ」
遠坂由香が顔を歪ませた。
「もたもたしてると…姉御、壊死しちゃうぞ!!!?
なあ、聖。レグの…逆転の呪法…教えてくれよ」
懇願の八の字眉。
ぴゅ~♪
聖は口笛を吹く。
「テライケメンのひーちゃん」
ひくり。
そして大きく息を吐いて。
「そこまで言わはれるのなら、教えないわけにはいけまへんな」
それは顎を摘んで真面目な顔。
疲れる。
この男…。