シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「何だ騒々しい」


蓮が顔を顰める。


「女、お前に言っていない。

言葉を慎め!!!」


無駄に…誇り高い坊ちゃまだ。


考えてみれば…

今だからこそ打ち解けているものの、最初はかなり高飛車だった。


気を許せば懐く…ああ、そんな処まで煌に似ているのか。



「葉山、来い!!! 来てくれ!!! 紫堂玲が大変なんだ!!!」


「玲様が!!!?」


私は立ち上がった。



「発作起して…誰も回復出来ないんだ!!!」


泣きそうな顔で。



「蓮、神崎の薬…」

「先刻飲んだばかりだ。そう何度も飲ませていいものなのか!!?」


蓮の返答に、遠坂由香は押し黙って。



「とりあえず、玲様の元に行ってくる!!!」

「待て!!! オレも…」


私は、立ち上がろうとした久遠に頭を振った。


「まだ…傷は癒えていないんだ。

それに…ここを空には出来ない。

玲様は望まれていない」


すると久遠は舌打ちをして。


「旭、来いッッ!!!」


久遠の呼びかけに、派手な足音をさせて旭が部屋にやってきて。


「クサをたっぷり持って、紫堂玲を救出せよ!!!」

「了解(ラジャー)!!!」


玲様に…


同情の念を向けたのは私だけではないだろう。


それでも…回復力があるというのなら。


玲様…ごめんなさい。


そうして私は、皇城翠と…

悪臭放つ旭と共に…

走ったんだ。


玲様の元へ。



だから――知らなかったのだ。


私がその時落とした青い手紙を、久遠が手にして開けたのも。


それを玲様に渡すことすら忘れていた私にとって、そこに書かれていたことが、この先どんな重要な意味を持つものか…


何1つ気づくことがないまま。


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