シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
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私が玲様の部屋から出た時、丁度隣室からも煌が出てきた。
「櫂様の様子はどうだ?」
「魘(うな)されてたけど…今は眠ってる。命には別状がないから安心しろ。今は…休ませてやろう。…玲の方は?」
「一時期発作が酷かったけれど…今は何とか落ち着いた。ギリギリで、回復結界とクサの効力があったらしい。もう少し時間が経てば、薬を飲んでもいいと思うが…玲様が目覚めたら聞いてみる。
ああ、芹霞さんも大丈夫だと蓮から伝えられた。これから、緋狭様の様子を見ようと思う」
するとほっとしたような顔を見せた。
「ああ、頼む。特に緋狭姉は訳判らねえ状況だから、とにかく壊死しないよう回復結界を強めて欲しい。勿論肉体の回復は…玲もだけどさ。
けど…さんきゅな。お前と旭が駆けつけてくれなきゃ、玲は本気でやばかった。あと…旭が玲の口に突っ込んでいたあのクサはなんだ?」
「私も知らない。旭がまた摘んできて、キッチンが異臭だ。久遠の…術がかかっているらしいが」
そして煌を見上げた。
「煌。櫂様と玲様はどうされたんだ?」
すると煌は複雑そうに顔を歪めて、頭をがしがしと掻いて。
「久涅に、ばらされたんだよ。
玲が芹霞の中からの櫂の記憶を奪ったって」
「な!!!」
「玲はそれだけは櫂に知られたくなかったらしい。そのショックに発作起こして…」
「櫂様は!!!?」
「玲を助けなかった。心を闇に囚われて。芹霞の心が戻らないのは、玲が裏切ったせいだと…久涅の言葉に飲まれた。そしてただ芹霞の愛だけを懇願し…芹霞に激しく拒絶され、玲を助けない櫂にキレた芹霞に、いらないと言われて…力を暴走させた。
俺がぶん殴らねば、2ヶ月前の東京の再現になったかもしれねえ規模になったはずだ…」
そこまでの絶望感だったのか…。
そして煌は一旦言葉を切り。
「言葉で言うのは簡単よ。ショックだキレた暴走した。けど…現実は、あの状況は…そんな軽々しいもんじゃねえんだ。
なあ…桜」
褐色の瞳が、すうっと細くなった。
「あれだけの力を放出してるのに、俺が櫂をぶん殴れたのがひっかかる。
しかも力の矛先が玲に向かなかったのが、櫂の奥底の…玲への思慕だけが要因じゃねえように思うんだ」
「どういうことだ?」
「力の流れが…力そのものが。
吸い込まれるように…塔の方角に消えた…気がする」
私は目を細めた。
「櫂の力が、利用された気がするんだ」
煌は、苛立ったように頭をがしがしと掻く。
「――久涅に」
上げられた顔は冷ややかで。
「どの程度、思い通りになったかは知らないが…あれだけの力をもし塔が吸収したのだとしたら。
何か、起きるぞ」
それは危殆の孕んだ言葉で。
私が玲様の部屋から出た時、丁度隣室からも煌が出てきた。
「櫂様の様子はどうだ?」
「魘(うな)されてたけど…今は眠ってる。命には別状がないから安心しろ。今は…休ませてやろう。…玲の方は?」
「一時期発作が酷かったけれど…今は何とか落ち着いた。ギリギリで、回復結界とクサの効力があったらしい。もう少し時間が経てば、薬を飲んでもいいと思うが…玲様が目覚めたら聞いてみる。
ああ、芹霞さんも大丈夫だと蓮から伝えられた。これから、緋狭様の様子を見ようと思う」
するとほっとしたような顔を見せた。
「ああ、頼む。特に緋狭姉は訳判らねえ状況だから、とにかく壊死しないよう回復結界を強めて欲しい。勿論肉体の回復は…玲もだけどさ。
けど…さんきゅな。お前と旭が駆けつけてくれなきゃ、玲は本気でやばかった。あと…旭が玲の口に突っ込んでいたあのクサはなんだ?」
「私も知らない。旭がまた摘んできて、キッチンが異臭だ。久遠の…術がかかっているらしいが」
そして煌を見上げた。
「煌。櫂様と玲様はどうされたんだ?」
すると煌は複雑そうに顔を歪めて、頭をがしがしと掻いて。
「久涅に、ばらされたんだよ。
玲が芹霞の中からの櫂の記憶を奪ったって」
「な!!!」
「玲はそれだけは櫂に知られたくなかったらしい。そのショックに発作起こして…」
「櫂様は!!!?」
「玲を助けなかった。心を闇に囚われて。芹霞の心が戻らないのは、玲が裏切ったせいだと…久涅の言葉に飲まれた。そしてただ芹霞の愛だけを懇願し…芹霞に激しく拒絶され、玲を助けない櫂にキレた芹霞に、いらないと言われて…力を暴走させた。
俺がぶん殴らねば、2ヶ月前の東京の再現になったかもしれねえ規模になったはずだ…」
そこまでの絶望感だったのか…。
そして煌は一旦言葉を切り。
「言葉で言うのは簡単よ。ショックだキレた暴走した。けど…現実は、あの状況は…そんな軽々しいもんじゃねえんだ。
なあ…桜」
褐色の瞳が、すうっと細くなった。
「あれだけの力を放出してるのに、俺が櫂をぶん殴れたのがひっかかる。
しかも力の矛先が玲に向かなかったのが、櫂の奥底の…玲への思慕だけが要因じゃねえように思うんだ」
「どういうことだ?」
「力の流れが…力そのものが。
吸い込まれるように…塔の方角に消えた…気がする」
私は目を細めた。
「櫂の力が、利用された気がするんだ」
煌は、苛立ったように頭をがしがしと掻く。
「――久涅に」
上げられた顔は冷ややかで。
「どの程度、思い通りになったかは知らないが…あれだけの力をもし塔が吸収したのだとしたら。
何か、起きるぞ」
それは危殆の孕んだ言葉で。