シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「芹霞さんは…最後まで櫂様を思い出さなかったのか?」
「ああ。まるで全然少しも。
思い出す処か、櫂が切羽詰って迫れば迫るほど、憎んだような声を出した。あいつは無駄に正義感が強いし、何より発作起した玲の一大事に、助けない櫂に怒りをぶつけたんだ。そして…そのまま」
「愛憎は…紙一重か」
憎しみもまた…無自覚の愛。
櫂様を憎く思った芹霞さんにしても。
玲様を憎く思った櫂様にしても。
「なあ…桜。
更に芹霞さ…」
そして辛そうに歪ませた顔を見せ、
「玲に惚れてるらしい」
そう私に言った後、目をそらした。
「この俺でさえ、芹霞の様子で判ったんだ。
櫂がそれに気づかないはずねえよ。
だから…荒れた。
だから…玲を恨んだ」
「もう…戻れないのか、
櫂様と玲様…仲睦まじくは…」
思わず…心の不安を吐露すれば、
「離れさせは…俺がさせねえよ、桜」
真っ直ぐに合わせられた褐色の瞳は、その意思故に強い力を持ち。
「"俺達"がすべきことは、それなんだろう。
だから今、"約束の地(カナン)"に居る。
俺達が此処に来たことは、必ず、意味があるはずだから…」
緋狭様の導き、なのだろうか。