シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「邪魔するな、如月」
声に振り返れば久遠。
怪我していたはずなのに、椅子に座って…机に散らばる紙の山に目を通し、手にした赤ペンで数字を振っている。
「お前…起きてていいのかよ!!?」
「こんな時、寝てられるか。それに…葉山の結界で血は止ったし。葉山の結界は、緋狭や紫堂玲に集中すればいい」
こいつなりに…遠慮したのかな。
まだ顔、青白いじゃねえか。
「しっかしこの紙の山…。まさかさ…下の全部…読んだとか?」
「当然だろう。オレを…何処ぞの怠け者みたいに言うな」
そう言った時、
「ぶほっ」
凄まじい早さでキーボードを叩いていた遠坂が、変な声を出した。
「由香、真面目にやれ!!!」
「判ったよ~久遠。小癪な、アオワンコめ~!!!」
カタカタカタ…。
「頑張れ~由香~」
「頑張れ~嬢ちゃん~」
放心中の大クマと小サルが、やはり放心したまま、棒読みのような頼りないエールを送った。
「きゃはははは!!!
次旭、次旭!!!」
対照的に元気溌剌としているのはチビだけで。
「こ、こら、旭!!! ああ、間違えた!!」
「きゃははははは~」
「旭、由香の邪魔をするな。飯抜きにするぞ!!?」
「しゅん……」
一体何がどうなっているのやら。
「如月。これは…遊びではないのだ」
金色の瞳を赤く充血させて、蓮が力なく説明してくれた。
「実はな、紫堂玲宛の青い紙があってな…」
「ああ、応接間に落ちてたの見たぞ。持って来たし。これだろ?」
「そうそう、それを久遠様が解かれたんだがな」
「解くって…解く要素あったのか、あれ!!!?」
一応、持ってきたから、再度広げて見つめた。