シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
画面の左下に、3種の犬が横並びに表示されている。
左から白ワンコ、黒ワンコ、青ワンコ。
その下には、応じるように…0、1、-1となっていて。
「あれはな…得点なんだ」
蓮が説明してくれた。
「点数を上げねばハートは貯まらない。点数を上げるためには、1のものを叩かねばならないんだ」
「おお、だったら黒ワンコだけを…」
「0も叩かねばいけないのだ。叩かねば…ミスとなり-1換算になる」
「だったら、青ワンコさえ叩かねば…」
俺がそう言うと、蓮は大きな溜息をついて、遠坂達を顎で促した。
「ぎゃああああ!!! 何、また変わったのか!!!? 今度-1は白ワンコか!!? って、えええ!!!? もう黒ワンコ!!!?」
変わる?
「ああやって、ランダムに…変わっていく。更にレベルが上がれば…凄まじく犬が出て来る」
「あああああ!!! ボクの指は10本しかないのに、どうしてそれ以上のワンコが出て来るんだい!!!!」
遠坂でも追いつかねえ速度って…一体?
「ああ、でもでも!!! イイトコ行ったやないか、由香はん!!!」
何馴染んでやがんだ、アホハット…もといトリ。
「あと1つ!!! あと1つのハートで終わりだ!!! がんばれ、嬢ちゃん!!!」
このクマ…えらくイケメンって何よ。
「なあ…もう少しで終わるな」
「ウチらの苦労も報われたがな~」
「長い戦いだったな。おじさんは目がしょぼしょぼだ」
サル、トリ、クマに…連帯感でも生まれたのか、
「「「「行っけ~~!!!」」」」
「きゃはははは~。"行っけ~"、"行っけ~"」
拳を振り上げ盛り上がる連中とは対照的に、久遠の顔は冷ややかで。
「何だ、こりゃあああ!!!?」
そんな時、遠坂が吼えた。
29個のハートを乗せた升目の下から――
…赤い何かが、にゅうっと出てきた。
それは段々と膨れあがり…
「顔になるんか!!!」
怒った表情をした、スライムみたいな赤い変なのが、
「来るな来るな!!!」
升目を下から貫いて。
「うわあああ!!! 顔が裂けた!!!?」
でかい口…らしき裂け目から…火を吹いた。
そして――
「きゃははははは~」
ハートは全て燃やされて。
赤いのは満足そうな"どや顔"で、下に引っ込んで消え去った。
「「「「………」」」」
静まり返る機械室。
「由香、ほら続き続き」
「あ…はっ!!!」
カタカタカタ…。
蓮に促されて、遠坂の戦いがまた始まる。
まるで夢のような…迫力ある赤いモノ。
共感(シンパシー)のような記憶が蘇る。
まさか…あれ…
――この、馬鹿犬めがッッッ!!!
「緋狭姉…とか?」
――あはははは~。
多分――
そんな気がした。