シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
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こんなに僕に考える暇を与えない、忙(せわ)しいゲームをするのも初めてだし、僕がプログラムの穴を"読めない"難解なゲームも初めてだ。


もう何万回、何十万回、犬を叩いたか判らない。

ようやく実った僕の"心"は、エロワンコと怒れる緋狭さんに奪われて。


何度涙を忍んだことか。

いつしか僕も、このゲームに夢中になってのめり込んでしまう。


電脳世界の力を使える僕の矜持と"全能神"の名に賭けて、どうしてもこのゲームだけは、"骨"を落とさずCLEARしたい。

というより、落とすことが出来ない。


諦めず頑張れば、何れ来る。

報われる時が!!!


「流石は師匠!!! エロワンコと姉御攻撃食らわずワンコを凄まじい早さで叩き続け、ようやく30万点目前!!! 30個のハートを奪ったれ!!!」


頑張ったよ、僕本当に頑張った!!!

ゆんゆん並に、ゲームCLEARに頑張った!!


あと少し、あと…。



――!!!?



30個ハートの手前。


突如画面左上から出てきたのは、ハートを撒き散らすチビキャラ。

黒髪の大きい目をくりくりさせた可愛い…二次元の少女。


これは…


「「芹霞!!?」」


僕と煌の声が同時に響いて。



「わわわ、やめろ芹霞、おい!!!」


芹霞が投げキスを向けると…

全ての穴からハート目のワンコが同時に現われ、僕が叩く間もなく、穴から勢いよく飛び出したかと思うと、チビ芹霞に盛ってしまった。


一斉故に全て叩けぬ僕に大幅な減点。


その上キーとは無関係な位置で群れているおかげで、時間は減り続けるのに、…叩くべきワンコがいないという状況。

即ち…時間ロス。


その間にチビ芹霞は、盛るワンコを全て躱して、スキップしながら画面を堂々と横切り、画面右の升目に向かって行く。

背景の1つとして描かれていた土管の上に、いつの間にやら現われていた、高見の見物をしている…白い毛がふさふさとした猫に抱きついた途端、29個のハートが真ん中からぱっくりと割れて、消えてしまった。


そして芹霞は…その猫にハートを飛ばしながら何度もキスをして消え去る。

その猫の目は紅紫色だった。



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