シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「その解釈は?」
澄明な久遠の声が響く。
「お前が以前、由香と格闘ゲームをしながら、行動で"0"と"1"の言語に変換させて訴えた…その類のものか? つまり、犬が3種があるのは偽装(フェイク)、実際は全ての犬の出方のルールに従って、0と1言語になるとか…」
「そうも思ったけど…突き詰めて考えれば、幾ら氷皇でもあの言語を理解しているとは思えないんだ。可能性は0ではないけどね。それに、0と1の言語は二進法。48キーも必要ないし」
「左手を0、右手を1とは考えられないのか?」
「ん…。同時に出て来る犬は意味成さないよね。それに対する僕の消し方も、臨機応変だし。それに僕は"-1"の存在も気に掛かる。-1となった犬の動きに意味があるのか…。それだけじゃなく、この胡散臭い青犬も気になるな…」
どれを取ってみても――
怪しい材料ばかりで。
その全てを検証するには…幾分ゲームの速度が速すぎた。
僕がゲームをしていなければ、プログラム側から検証も出来るだろうけれど、今僕はゲームを落とさないことに心を砕かねばいけない状況で。
かといって、由香ちゃんにゲームを代わって貰おうにも…涙をぼろぼろ流しながら、真っ赤に充血した目を見開いている姿を見たら、言えなくて。
「なあ…紫堂玲…」
これは皇城翠の声か。
力なく涙声だ。
「それはブラインドタッチ用のゲームか~?」
「え?」
「前、朱貴に…今の時代、パソコンで文章をうてなきゃ駄目だって言われて…フリーでネットに転がってたブラインドタッチ用のゲームで訓練したんだ。だから俺、ブラインドタッチ出来るようになったんだけれど~」
「小猿くん、これはそんなキーの位置確認レベルの可愛い初心者用ゲームじゃないよ!! そんな程度ならボク以前に、あの情報屋でも、いや何よりそこの元ハッカーのクマが弄った時点で即CLEARしているって。
だけどそう言われれば…マウス必須のこのご時世に、マウス使わないゲームの作りというのもおかしいよな。普通、マウスにも対応する作りにもなっていて、やる側でどちらか…或いは併用かを選べるはずなんだけれど、これはまるで全然マウスは非対応。これだけ複雑なアルゴリズムにしておいて、マウスではなく…キーボードのキーのみをHITキーにしたのは意味があるのかなあ…」
確かに…。
難易度をあげるのなら、何もキー慣れした僕達にキーボードを与えず、マウスのみにすればいい。
マウスの方が、動きに制約がないし、更にCLEARが難しい要素になったはずで。
「48キーを使わせたことに、意味がある…のか?」
蓮の声が、やけに大きく響いた。
カタカタカタ…。