シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
煌の動体視力は、緋狭さんとの修練の賜物だ。
多分僕より、数多く早く動くものに対する察知能力は、本能的に優れているんだろう。
…犬だし。
「師匠が押していないキーは、全部で25か」
そこに混ぜられているのは英字の他、数字と記号。
記号が入っている時点で、意味はなさない。
「ん~、並べ替えも無理だねえ。また絵文字…とかでもないみたいだし」
「僕が押さないキーが決まっているということは、押しているキーが決まっているということにもなるね。これは…偶然とは考え難いな。いつもの…氷皇のパターンからして」
カタカタカタ…。
「…お前、いつもこんな謎解きして遊んでいるのか?」
呆れ返ったような久遠の声に、思わず僕は反論する。
「遊んでいるわけじゃないよ!!! 何が楽しくて僕、氷皇と仲良く知恵比べをしないといけないのさ!!! いつもいつも一方的だよ!!! 僕達仲良しじゃないんだよ!!! 僕凄く嫌いなんだよ!!! 構わないで欲しいんだよ!!! 本当に本当にいつもいつも迷惑してんだよ、僕はッッッ!!!」
カタカタカタ…。
「し、師匠、興奮したら心臓が。落ち着いて? はい、どうどう…」
「何だかんだ言いつつ、それでもきちんと解くと見越してるから、こんなものを寄越すんだろう。失望していれば、誰がこんな手の込んだものを作るか。
だとしたら、これも紫堂玲なら解ける。頑張れ?」
かさり。
「久遠!!! 手伝えよ!!! 何人事のように!!!」
かさり。
「久遠、人の話を聞「如月、逆はどうだ?」
それは久遠の声で。
「逆?」
「ああ。あの手紙は…四字熟語という規則性がある漢字の順序を逆にすることで意味を持った。だとすれば、その延長上にあるこのゲームも、その流れを持っていると考えてもいいんじゃないか?
紫堂玲が押していないキーは順序を逆にしても意味はなさないし、規則性がないというのなら…逆…紫堂玲が押している、残りの23キーはどうだ?
あの男が故意的にそれらのキーを押させているのなら、その順序に規則性はないか?」
鋭い意見だったけれど…。
「僕…断定出来る程観考える余裕がない。叩き続けるのが精一杯」
カタカタカタ…。
また…芹霞を久遠に奪われ、29個の砕心(ブロークンハート)。
ゲームとはいえ、結構…いや、かなり凹む。
カタカタカタ…。