シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「如月、お前は判るか?」
「ちょっと待てよ…」
そして暫く、煌が僕の手元や画面を凝視した。
視界の中、煌の橙色の髪の毛はやけに目立つ。
「おい、ワンコ…大丈夫か? 半目で固まってるぞ?」
翠が煌に声をかけて、やはり同じように僕の手元を見たようだけれど…
「俺…紫堂玲が全てのキー叩いているようにしか見えな「玲。久遠の言うとおり、お前、打ってるキー…繰り返してるかも…」
煌が翠の声を上書きするように、僕に言った。
「本当か!!?」
本人が自覚出来ない程、本当にこのワンコ叩きは凄まじい早さが必要で。
その中で、規則性が判るんだ、煌は。
やはり…理解より本能の男だ。
リアルワンコだ。
「多分だけどな。1回書き出してみるな」
キーを覗き込み、対応する表記を見ながら、紙に書き出す音がする。
「p6\gqy5iyt@dky@fy;kq:y9qe@2f@p.;0@wyxdsywam@rtq@ww:t@d4rk@2y@pk0y@weqweqe:」
由香ちゃんがそれをまた読み上げた。
「うん。やっぱり…そうだ。これ見ながら、もう1回玲の手見てみたけど、1,2…全部で72個を1サイクルにして、早さやタイミングは違うけど…その順序でお前叩いている」
「さすがは同類だねえ。だけど益々難解になったんじゃないか? 重複有り、記号は…少なくなったけれど、記号ある限りは並べ替えはやはり難しい。でもこれがひたすら繰り返されているというのなら、このキーの順序は、偶然だったと見逃すことも出来ないよね…」
「:eqew@y0kp@y2@kr4d@t:ww@qtr@mawysdxyw@0;.p@\f2@eq9y:qk;yf@ykd@tyi5yq\g\6p」
今度は蓮の声がして。
「順序を反対にしても…意味をなさないな…」
そんな時だった。
「平仮名入力、じゃないか?」
三沢さんがそう言ったのは。