シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
いつも玲くんはあたしを甘やかしてくれていたから、玲くんの視線が向けられないのは、凄くダメージが大きくて。
いつもの、にっこりほっこりの温かな微笑みがないのは、厳寒の最中に放置された心地だった。
もう…駄目なのかな。
顔見るのも嫌なのかな。
まだ"お試し"はあるのに…もう関係ないのか。
このまま時間が来て、終焉なのか。
その後も…前みたいな関係に戻れないの?
結果がNOでも、前みたいな仲良しに戻れるってことで始めた"お試し"なのに、他人以上の遠い距離にてTHE END?
泣きそうになった。
それなら"お試し"しなければよかった。
恋がどうのより、純粋に…前以上玲くんと仲良くなりたくて始めた"お試し"。
あたしはもっともっと玲くんとの距離を詰めたかったのに。
玲くんが新たな恋をすれば、あたしは捨てられるんだ。
ウザい、馬鹿なお子ちゃまだから…。
カタカタカタ…。
無情な無機質の音ばかりが響く。
そんな時に、煌に椅子に座れと促され…少しでも玲くんの視界に入りたいと、近い場所の椅子に座ろうとしたら、玲くんの舌打ちが聞こえた。
更に気が滅入ったけれど…
紅紫色の瞳と褐色の瞳がこっちをじっと見ているから、あたしはそれを隠していつも通りに振舞おうと心に決めたんだ。
「計算ってどんなの?」
カタカタカタ…。
煌は、見るに耐えない…下手くそな文字が書かれた紙を見せた。
「これ何? 象形文字? ミミズの死骸?」
思わず聞いたら、小猿くんが飛び跳ねてキーキー怒った。
「これは俺が書いた平仮名だ!! 何で象形文字なんだよ!!! ミミズの死骸って何だよ!!!」
小猿くんは、いい処の坊ちゃんなのに字は下手くそらしい。
「俺達も翻訳に多少時間かかった。これは後ろから読んで…」
煌が漢字と平仮名が混在した文章を紙に書いてくれた。
凄く煌の字が達筆に見える。
サルよりワンコの方が人間に近いらしい。
新たな人間の進化の過程を見た気がする。
久遠の一声で、2つの計算問題の内、前半部分はあたし達の担当になったけれど…ちゃんと計算できるだろうか。
以前の…数学の小テストでは、同じ計算問題を解いているはずなのに、あたしと煌と由香ちゃんの計算結果が違う上、更には正解者はいなかった。
由香ちゃんなんていつも機械いじってるし、玲くん補佐としてプログラムを作れるんだから数学なんて得意かと思えば、いつも機械に計算を頼ってばかりいるから、自分での計算が苦手らしい。
小猿くんは見るからに計算できなさそうだし、クマ男は…ふさふさな毛を取ったら計算力が落ちてそうな気がする。
煌の計算能力は…考えるだけ無駄だ。