シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
プログラマーで計算も出来るイケメンは、玲くんだけなんだけれど…玲くんは、むくれたような、憮然としたような表情でゲームをしているだけで。
こっちには興味がないんだろうか。
あたしが居ない間は、もっと和気藹々(わきあいあい)としていたんだろうか。
消沈の溜息しか出てこない。
…考えるのはやめよう、凹む一方だ。
しかし…何で、久遠と煌以外、皆揃って目が充血しているんだろう。
制裁者(アリス)の邪眼もびっくりだ。
何か感染病でも蔓延しているんだろうか。
旭くんが戻ったら、あたしも予防で目薬ささないと。
とりあえず、与えられた計算問題を解いて、2人以上の同じ解答が出たら、それを正解とすることで"後半問題組"の意見は一致。
「ええと、問題は何だっけ?」
"携帯電話の数字を掛けること"
「うわ、やべ。俺掛け算なんて、一発で正解したことねえよ」
「奇遇だな、ワンコ。俺もそうだ」
「うわ~めちゃ掛けまくりだね。クマ。君の正解に期待してるよ」
「俺!!? 俺の正解が前提!!?」
そして皆が一斉に、ペンを握って計算を始めようとした時だった。
「34:56。
こっちの答えは」
久遠の声が響いた。
ペンを持たず、腕組みをして目を瞑ったその時間は、2分も経っていないはず。
問題は――…
"3で割れる0を除いた4桁の連番の時間"
「久遠、早すぎだってッッ!!!」
「何でそんなにすぐ答え出るよ!!!?」
あたしと煌は同時に驚きの声を上げた。
カタカタカタ…。
「計算式を書いた紙は何処!!? 頭で割り算したの!!?」
「"3で割れる4桁の連番"だろ? なんでそんなに簡単に出るよ!!? お前、神か!!? 神様なのか!!?」
ありえない。
絶対ありえない。
4桁の連番なんて、いくつパターンあるのよ!!?
頭で計算なんて絶対無理!!!
「…紙に書いて計算なんて、何でこの俺がそんな面倒なことするんだよ…。いいか? 3で割れるということは、4つの数字を足したものが3の倍数になってればいい。更には時間ということは、59以上の連番はありえない。そして0を含む連番もカット。
だとすれば組み合わせは、1234、2345、3456、4567,5678、6789の6通り。そのうち、時間として成り立つのは、1234、2345、3456の3つ。
この3組の4つの数字を足せば、10、14、18。3の倍数は3456のみ」
「「お~すげ~」」
あたし達は感嘆の声を上げて拍手をした。
鮮やかだ。
あたしのことを馬鹿にするだけある。
「久遠は凄いね~」
そう目を輝かせて賞賛したら、大きな舌打ちが聞こえた。
背後から聞こえた気がしたんだけれど…
背後には玲くんしか居ない。
空耳か。