シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
逃げろ。
逃げろ。
これは夢。
これは悪夢。
捕まるな。
振り向くな。
夢の中で夢だと感知するのは、明晰夢というものなのだと…以前、夢に潜ることが出来るという不思議な友達、紫茉ちゃんに教えて貰ったことがある。
その明晰夢は…特殊なもので、夢の主体を故意的に維持出来るようになれば、"予知夢"というものに変化すると…これは何かの雑誌で見たことがあったっけ。
冗談じゃない。
こんな悪夢が現実に…
未来になってたまるものか!!!
あたしは必死で逃げ回る。
闇に絡み取られないよう、死に物狂いで。
漆黒色は嫌いだ。
闇なんて嫌いだ。
あたしの本能が、嫌悪する。
――ドウシテキライナノ?
来るな!!!
あっちへ行け!!!
あたしの本能が、拒絶する。
――ドウシテコバムノ?
逃げろ。
逃げろ。
――キテ…。
闇に触れさせるな。
あたしを壊させるな。
――アタシニフレテ。
あたしは闇など必要ない。
――カエッテキテ。
闇よ、去れ!!!
あたしの元から、去れ!!!
――ネガワクバ…
「――…か?」
去れ、永遠に――!!!
「……霞?」
――ズットアイシテ…。
「芹霞、大丈夫か!!?」
全身汗びっしょりになりながら、
泣き叫ぶようにして飛び起きると――
「芹霞!? 僕が判る!!!?」
鳶色の瞳が、上から心配そうに見下ろしていて。