シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
『じゃあ将来は君に似て…黒髪に黒い瞳の凄くいい男になるよ。僕みたいに色素の薄い女顔じゃないから、もてるぞきっと』
「だったら、この男の声は…櫂の父親、当主か?」
しかし玲くんは、煌には返答しない。
『名前、考えたか?』
女性は微笑む。
凄く美人だ。
『ねえ、知ってる? さんずいに日の下に土…涅槃の"ね"って…黒い色のことなんですって。涅色(くりいろ)っていうらしいんだけれど…黒と少し茶が混ざった色合いなんですって。私、漢和辞典で調べたの。
ねえ? ずっと私たちの可愛い子であるよう…永久の"久"を取って…』
ちょっと待って。
それって…。
『久涅(くずみ)ってどうかしら?』
「「「「久涅!!!!?」」」」
「どういうことだよ、なあ玲。櫂と久涅は腹違いだろ!!? なのにどうして父親と母親が同じになるよ!!!」
しかし玲くんは何も答えない。
代わりに…その顔色が凄く悪かった。
震えているようにも見える。
「玲くん・・・…?」
その時、後ろでカツンと音がした。
そこに立っていたのは――
「櫂!!!?
と、桜!!!?」
紫堂櫂が強張った顔でこちらに歩いてきて、画面の前に立つ。
いつから…居たのだろう。
全然気づかなかった。
それは皆も同じだったみたいで、驚いた顔を見せた。
『ねえ、こんなに幸せでいいのかしら。私…』
『いいんだよ、あいつには好きな女がいる。そして僕は次期当主の座を渡したんだし』
カメラが固定されたのか、男性が女性に近づく姿が撮影されている。
「なんで――」
紫堂櫂の…悲痛な声。
『幸せになろう、
僕と美由紀と久涅で』
紫堂櫂は叫んだんだ。
吐き出すように。
「なんで久涅の親が、
俺の母親と――
玲の父親なんだよ!!!」
――え?
画面に寄り添う男女。
男性は――…
玲くんによく似た…
線が細い柔和な美男子だった。