シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

「久涅が、真にあの女を母親として先に生まれたのなら、同じ母親から生まれていたはずの…後発の俺は…何だ!!!?」


その声はあまりの悲痛さに掠れきっていて。

誰もが声を出すことが出来なかった。


「生んだ…のかも知れないぞ、櫂」


やがて、重々しい煌の声が弱く響く。


「……はっ!!」


櫂が自嘲気な短い空笑いをして、言葉を続けた。


「なあ…父親が違ってても、母親が同じなら…顔は酷似するものなのか?」


そしてゆっくりと振り返り、僕を見た。


「………っ」


冷たい…温度を失ったその漆黒の瞳。

傷心の果ての…絶望的なその瞳に、僕は思わず唇を噛んで拳を握りしめる。



「なあ…俺は…

どうして親父に嫌われているのだろう?



どうして――

愛されないのだろう?」



痛い。

心が痛い。



「俺は…誰と誰の子だ?」



傷つき過ぎた櫂の心が痛いんだ。



「俺から――

何もかもが失われていくのは

……因果応報か?


お前はどう思う?

――玲」


僕は、櫂の目を見ていられなくて横を向いてしまった。


突き刺すような視線が、怖い。



「なあ、玲。

言ってみろ。


この映像が真実だとしたら…

お前は何を思ってる?」



櫂の手が僕の肩にかかり、

僕はびくんと体を震わせた。



「お前は――

どう思ってるんだ!!!?」



そう肩を乱暴に揺すぶられた時。



壊れそうな櫂を感じて――


もう…

耐えきれないと思った。


僕は…

罪を贖わなけれぱならない。



もう…潮時だ。


時間なんだ。

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