シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「櫂…」
僕は、顔を上げて微笑んだ。
「真実はどうであれ…
お前は失ったモノなど無い」
"失った"
そう思うのは――
芹霞の記憶が無くなったからなんだろう?
「お前はお前だ。
お前の頂には…
真実の王冠(クラウン)が輝いている。
僕のような――
偽りの星冠(ティアラ)ではなく」
「違う!!!
そんなもの、俺は!!!」
「櫂」
僕は、まっすぐに漆黒の瞳を見つめた。
「ごめん。
今…芹霞の魔法を解いて…
お前に返すから…」
苦しい。
僕の心も苦しい。
だけど――!!!
泣きたいのを我慢して、
僕は――
芹霞の腕を引いて引き寄せた。
「え、何…玲くん?」
「ごめんね、僕の自我(エゴ)で…
櫂も芹霞も…傷つけてしまって」
震えたのは…
僕の声か、心か。