シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「とりあえず、下に行くか」
久遠の声に皆が賛同し、司狼が蓮と久遠を先導した。
「師匠…」
由香ちゃんは八の字眉をしたまま、ファイトと小さく呟いて、力を込めた拳を僕に見せた。
空笑いも出なくなった僕に、三沢さんはぽんと1つ肩を叩いて、由香ちゃんと消える。
場に残るは…櫂と煌と桜と僕と芹霞。
煌と桜は、机に手を置いたまま脱力したように項垂れる櫂の両側に立ち、櫂を宥(なだ)めるように声をかけている。
幾ら僕が櫂に駆け寄りたくても…近づけない距離が出来ていて。
僕は疎外されたように、蚊帳の外にいるかのように…彼らを見つめることしかできなくて。
耐えきれなく一歩足を前に踏み出した時、3人はくるりと僕に背を向けて歩き始めた。
僕を残して消えゆくその風景に、僕は伸ばしかけた手を力なく落とすしか出来なくて――
寒い…。
心が寒い…。
「玲くん…」
初めてそこで、僕は芹霞も居ることに気づく。
「玲くん…お話があるの」
真っ直ぐなその瞳に――
どくん。
疚(やま)しさしかない僕は、罪悪感を煽られた。
そして同時に…強い瞳が訴えることは、
どくん。
僕の不安を掻き立てるものでしかなく。
「どんな…こと…?」
ああ、多分。
多分それはきっと――
「"お試し"のこと」
終焉の宣告。