シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
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凍てつく夜空の元――

色取り取りの無数の光源(ネオン)に、陽気な音楽が響き渡る。


路肩に佇(たたず)み歓声を上げるのは、喜びと幸せに満ちた顔をした数多(あまた)の人々。


電飾と音楽と人々と…

渾然一体となった、騒がしい真夜中の行進行列(ナイトパレード)。


移動式電飾車(エレクトリックカー)の頂上には――ティアラ姫…に酷似した不機嫌そうな"王子"が、腰を振りながら音楽に合わせて踊っている。


それを見て共に踊りだす子供、たかれるカメラのフラッシュ。


賑やか過ぎるその光景は――

遊園地KANANにおいては当然の風景でありながら、今この状況でそれを見るのは異常だった。



「騒がしくて"あそこ"から出てみたら、突然こうなっってたんだ。

僕吃驚してさ~!!! ねえ久遠さま。どういうことなの?」



興奮冷めやらぬ司狼の純粋な疑問。


それを向けられた久遠は、頽廃(たいはい)的な顔に…珍妙な程の驚愕の色を浮かべていた。


「ありえない…全てにおいてありえない…。何故無から有へと…?」


動き始めたのは夜光行進(ナイトパレード)だけではない。

全ての遊具施設(アトラクション)が、稼動していた。



時刻はもうすぐ0時。


真夜中の遊園地はあまりにも盛況で…現実味がなかった。



「夢を…見ているのか…?」


蓮の声が震えていて。


「屋敷に避難させ…結果忽然と姿を消した"以上"の数の人間達が、どうして遊園地に蔓延(はびこ)ることが出来る?」


何処までも不可解的な事象。


「…増殖、か。

そう言えば…黄色い蝶から救出してもしきれない程に…逃げ惑う人間の数は膨れあがっていたと、言ってもいたな」


自嘲気な久遠の声が呼応する。


人が…何で増殖するんだ?

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