シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
そんな神妙な会話を遮った――
「すっげえ~、遊びてぇ~」
皇城翠は、突如考え込むようにして言葉を切り、
「あ、あのさ…ゆ、遊園地って…やっぱ…ラ、ラララララ…」
壊れたのか、元々なのか。
「小猿くん、パレードで歌って踊りたいのか?」
「ち、違うよ由香。お、俺が言いたかったのは…」
ちらっ。
私に視線が飛んで来た。
「ゆ、遊園地って…ラ…ラブラブカップルの…」
ちらっ。
また飛んで来た。
「デ、デデデートコース…だよね」
ちらっ。
「あ、ああ、愛を深める…て、定番…だよね」
ちらっ。
知るか。
こんな奇怪な状況で、発情しがちな脳天気猿に付き合う程、私は酔狂ではない。
私は皇城翠に背を向け、辺りを観察することにした。
「由香~…」
「……よしよし、何だかもう何処をどう慰めていいのやら…」
櫂様は――
ぞくりとする程険しい顔で、じっとその場を見つめられていて。
「……ヘリ…」
突如そう呟かれて、夜空を見上げられた。
攣られて私も空を見上げれば…何台かのヘリが、照明をつけながら緩やかに旋回しているようだった。
「ああ、遊具施設(アトラクション)の1つである"スカイウォーカー"が動いているんだろう。だが、まだあれは…試験的な段階で、試運転程度にしか起動しないはずなのだが」
説明した蓮は、神妙な顔で首を傾げる。
「何で…」
煌が目を細めた。
「何で突然、遊園地が回復して動き出すよ?
これは夢、か?」
櫂様は首を横に振り、1点を指差す。
「黒い塔が――建ったままだ」
闇の中でも存在を示すその怪異な塔が、奇しくもこれが現実だと告げている。
バタバタバタバタ…。
突如、騒がしい足音がしたと思ったら
「きゃあああああ!!!
クラウン王子~!!!!」
芹霞さんが、疾風のように横を駆け抜けて行った。