シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
常日頃より、彼女の行動は突拍子もないとは思っていたけれど、こんな…誰もが怪しむ幻妖的光景に怯む処か、その中にでさえ、猪のように一直線に猛進出来ることに、讃嘆すらしてしまう。
「せりッッッ!!!」
芹霞さんの腕を掴み損なったらしい久遠が、芹霞さんの後を追いかける。
芹霞さんの動きはいつもの3割増。
彼女に流れる…緋狭様と同じ血が、彼女の並ならぬ熱意と好奇心によって、一時的に目覚めるのだろうか。
あの久遠に捕まらないで走り続ける芹霞さんは、目をぎらつかせたまま、電飾車に脅威の跳躍力で飛び乗り…そして上へ上へ…頂上へとよじ登り…
「あの阿呆タレ…何してるよ…?」
クラウン王子に派手に抱きついた後、その真横に立ち、共に音楽に合わせて…ふりふり腰を動かして踊り始めた。
嬉しそうだ。
凄く…
嬉しそうだ。
「……はは」
気づけば――
「ははははは!!!!」
櫂様が笑い出していて。
「あいつらしいな、本当に」
眩しそうにその姿を見つめられて。
その顔は憔悴しているものの…先程までの陰鬱さを消して、穏やかなもので。
芹霞さんへの愛しさが漂っていて、私は切なくなった。
久遠が車に飛び乗って、芹霞さんを抱えて引き摺り下ろそうとしているのが見える。芹霞さんは手足をばたばた動かして、抵抗をしているらしい。
それを見た櫂様は、途端にすっと目を細めて…
「あいつ…泣きたいのに…泣けずにいるのか。
泣くのを見せたくないから…だから…楽しいことに飛びついたのか」
そう呟かれた。