シンデレラに玻璃の星冠をⅡ
「…泣く? 喜んではしゃいで弾けてねえか? 本人至って脳天気に…」
「違う。泣いてる…。何かあったんだ」
そう断言した櫂様の声は、不安げに揺れていて。
自分のことで精一杯のはずなのに、それでも心配するのは…芹霞さんのことなのか。
「判るんだ、芹霞のことは。
12年、見続けてきたんだ…」
夜の闇に溶けゆく櫂様の声は、どこまでも切なく。
「……判っているのに。
芹霞が悲しんでいると判っているのに…
それの原因が俺じゃないということが…凄く…堪らない」
聞く者の心を震撼させるような悲しさが漂っていた。
「俺は…何をしても憎まれ拒まれるだけ。
俺の手は…伸しても届かない。
俺の中の芹霞は、まだこんなに鮮やかなのに。
その心が――
俺に何もないとは!!!」
「櫂…」
煌が、櫂様の背中をぽんぽんと叩いた。
そんな櫂様を、距離をあけてみつめているのは玲様。
悲哀に満ちた端麗な顔。
崩れてしまいそうな…儚い顔。
玲様の唇は戦慄(わなな)いていた。