シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

「違うというのなら、

はっきりと宣言して下さい」


玲は引かなかった。


「櫂は自分の子だと。当主の血を引いていると」



玲は…櫂の地盤を固めようとしているのだと判った。


氷皇のビデオでは、久涅のことしか語られていない。

だから…

如何に櫂と久涅が似ていようとも、

親父の…当主の子供ではないと確定的になったわけではねえんだ。


母親は死んでいるから、母親から真偽は問いただせない。


だからせめて父親から――


玲は、はっきりさせて櫂の心を救おうとしている。


玲は信じている。


櫂の二親は、間違いなく…当主と死んだ母親なのだと。


「何故だ?

何故…死んだ"アレ"にそんなことをせねばならぬ?」


…息子という言葉を使わぬ親父。



「お前の言い方ならまるで――

"アレ"が其処で聞いているかのようではないか」


…櫂という名前すら使わぬ親父。


ふるふると…櫂の体が揺れた。



「櫂は…死にました。

当主もご覧になられたはず。


火葬にしたではありませんか」


玲の声は動じることはなく。



逆に責めるように、当主に問い詰める。



「櫂を追い詰めた原因は――

まさか…そんな理由ではないですよね」


櫂が死んだのは親父のせいだと、責め立てる。



「玲…。お前は…次期当主を剥奪されたいのか」


その時、軽快な笑い声が聞こえて。



横から現われたのは――


「久涅…」


櫂が呟いた。


久涅が俺達に背を向けるように立った位置は、丁度当主と玲の姿を掻き消すような位置だった。


風で…久涅の破れた豹柄のコートの布地が、ひらひらと揺れた。



「遊園地で…何をいがみ合っているんですか。

此の地は楽園。笑顔の楽園。


ほらほら、親父殿。

俺が案内して差し上げましょう。

たまには親子で遊園地でも粋でしょう」



久涅は…知っているのだろうか。

自分の出生を。


あの氷皇のビデオが真実であればの話だけれど。
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